4.抗議の方法
 もし、「自分の子供を人質に取られているから、教師に文句が言いにくい。」と思っているのなら、その考え方を変える必要があるだろう。親に人質意識がある限り、教師の怠慢は是正されず、子供を学校から救うこともできないのである。「担任に文句を言うと子供がいやがらせをされる。」と恐れている人もいるが心配することはない。親の文句に復習できるだけの気力のある教師であれば、逆に見込みがあると言えるだろう。子供への陰湿ないやがらせをする教師も少なくはない。その時は問題を明らかにする絶好のチャンスなのである。ことの事態を校長や教育委員会へ訴えれば、担任の交代もあり得るのだ。ただし、むやみに学校や教師にどなり込んでも効果はない。事態を調査し、証拠をつかみ、内容を明確にし、時期、相手を選んでおこなわなくてはならない。

 ・担任への注文は学年初めが効果的
 教師へ文句を言うのは親にとって大変、勇気のいることである。「もう少し、もう少し」と我慢しているうちに子供がいじめられっ子になってしまったり、落ちこぼれになってしまうケースが少なくないのである。小学3年の子供を持つ公務員の父親は父母会の自己紹介でこう言った。「前の学年では子供が学校から泣いて帰ってきても我慢させていました。担任の先生に何度も相談しようと思いましたが出来ませんでした。そのため子供は学校が嫌いになってしまい、親として反省しています。今年からは些細なことであっても、もう黙ってはいません。文句を言いにやってきます。」回りの親たちは「大人げないわね」とか「そこまで言わなくてもよいのに・・・」とささやいた。しかし、担任や他の父兄がどうあれ、「自分の子供を守るにはこれしかない。」と彼は自分の言葉をかみしめたという。その結果、担任がことあるごとに電話をかけてきたり、連絡帳に子供の学校での生活を報告してくれるようになったのである。今、彼の子供はいじめられることはなくなった。それは「あの親は口やかましい」という印象を担任教師と他の父兄に与えたためである。教師もそうした親に熱意を示すものなのである。
 ・担任がダメなら教頭、校長へ
 文句を言う相手はもちろん担任である。しかし担任が明らかに問題教師である場合や何度、文句を言っても対処してくれない場合は、直ちに教頭や校長に持ち込むべきである。そして校長でも、らちがあかない場合は教育委員会へ行くことを勧める。校長は学校の運営者であり管理職である。当然、生徒の親から苦情や文句を聞く立場にある。校長に会うために学校の受付で申し込むと、事務員が「何のようですか。約束していますか。」ときつい口調で問われたのでそのまま帰ってきたという母親もいたが、一番良いのは電話で日時を約束して、直接、校長室に行くことである。教頭へ話を持ち込むのも良い方法である。校長は一つの学校の在任期間が2,3年であるのに対して教頭は7,8年もいることがあるため、校長以上に校内の事情に詳しく、人脈も広いことがある。PTAの教師側の代表にもなっていることが多いため、日頃からPTAの会合などで知り合いになっておくと良いだろう。
 ・登校拒否で対抗する
 千葉市の歯科医師が小学5年の長男を私立中学に入学させようと父兄の個人面談で申し出たところ、担任は「私は私立中学の受験に反対です。私立中学の案内書が来てもゴミ箱に捨てています。」と言ったのである。その上、歯科医の教育観や父親としての資格についても批判し始めたため激しい口論となった。その結果、その担任はその子供に居残り、掃除当番を繰り返し、進学塾への時間に影響が出るように下校時間を遅らせ、嫌がらせを始めたのである。その担任は6年生にも持ち上がり長男への嫌がらせは続いた。そこで父親は思いきって子供に学校を休ませた。それも「病欠」ではなく「担任とのトラブル」とはっきり理由を書いて欠席届を校長に提出したのである。3日後に担任が説得に来たが玄関で追い返した。5日後に校長と共に来て「出席日数が不足すると卒業できない。」と脅しを受けたが「たとえ1週間でも卒業できることは調べてある。何ならこれから教育委員会へ行って確認しましょうか?」と答えると、担任と校長はあわてた。1週間の登校拒否が功を奏したのか、その後、子供への嫌がらせはなくなり、長男は無事、希望する私立中学校へ入学することができたのである。
 ・他の親と連携する
 柏市に住む父親が、私立小学5年生の算数のノートを見たとき驚いた。分数の加減計算がことごとく間違っていたのだ。子供に正しい計算方法を教えたところ、「先生の教え方と違う。」という。そこでそれまでのノートやテストの内容をチェックすると採点間違いが次々と出てきたのである。担任教師は基本的な計算が出来なかったのである。1人だけで文句を言っても言い逃れをされるおそれがあると判断し、何人かの同級生の母親と連絡を取り、他にもそのような事実があったことを確認した。そして次の父母会で教師にその証拠を突きつけたところ、「自分は算数が苦手です。」と告白したのである。教師は苦手な科目があれば勉強しなければならず、能力がなければ教師を辞めなければならない。何とかごまかせるだろうといういい加減な考え方で教育を行ってはならないのである。
 ・勤務評定で対抗する
 東京都杉並区の公立小学校に通う長女が学校でトレーナーをなくした。母親は盗難ではないかと担任に調査を願い出ると、「うちのクラスで盗難などあるはずがない。私は忙しいんです。そんなつまらない問題を持ち込まないで下さい。」と言ったのである。教師の対応に疑問を持った母親は担任教師の行動を調べ始めた。登下校の時間、自習時間、休暇日数、教科書の進度、服装や父兄の評判をチェックしそのコピーを学年末の父母会に提出したのである。この勤務評定に担任は青ざめた。なにしろ、組合活動で欠勤した日数から遅刻の回数まで表記され、おまけに月曜と金曜日に早く下校するのはアルバイトの進学塾へ行くためであるというコメントまで付いていたからである。以後、その教師は高慢な態度を改めたという。そしてこの勤務評定は他のクラスや教師にまで広がったのである。

 実際に担任へ文句を言った場合、多くはその教師の胸の奥にしまわれて終わってしまうことが多い。良心的な担任であれば学年主任や教頭などと相談し措置を講ずる。校長に直接、話を持ち込んだ場合は、教頭や学年主任を呼んで抗議の内容を確認し解決策を考える。そして担任を呼んで事実を確認し担任に注意を与える。いずれの場合でも親の訴えに対して何らかの措置を講じた場合は校長か担任から親に報告があるはずだ。もしいくら訴えても電話や報告がない場合はどこかでその訴えがもみ消されている可能性がある。しばらくしても何の報告もない場合は再度電話をかけてその後の状況を要求するべきである。また担任から事後報告を受けた場合はその報告が校長の承認を受けたものかどうかを確認しておく。できれば会話をテープに録音しておくと良いだろう。